【ヤンゴン】
朝食はビュッフェ。
モヒンガー。
ミャンマーでは朝の定番という。
ゆでた米の麺に、どろりとした温スープをかけ、具をいろいろ入れる。これが絶妙にうまくて感激。3杯。他は何も食べずじまい。
ホテルの外観。静かな路地の奥にこじんまりと建っている。
明るいロビー。
大通りまで散歩に出る。この界隈は大学や大使館が点在するエリアで繁華街とは離れている。
すぐそばにアウン・サン・スー・チー氏の邸宅がある。
人の出入りは特にない様子。
そばの建物でなにかイベントをしているようだ。
覗かせてもらうと会食中だった。
結婚式かなにかだろうか。
思いがけず「あなたもお食事を」と勧められた。
いや、ついさっきモヒンガー3杯…と思ったが、なかなかないチャンスだろうし、ご馳走になることにした。
チキン料理がメイン。酸味のあるスープ。小皿には独特の強い味がする佃煮のような漬物のようなものが載っていた。
同じテーブルにいた僧侶に話を聞くと、寺院に寄付を行った人たちの集まりだという。親族が中心らしいがそれだけでもないようだ。こうした寄付はしばしばあり、そのときはこうした食事会を開く習わしだそう。「寺院にはいつ来てもかまいません。食事もいつでも食べていってください」と僧侶。
仏教の国の不思議さと温かさに、旅の始まりからいきなり触れた感じがした。なんとも幸運なハプニングだった。
ヤンゴンには市街地と郊外をめるぐ環状線の鉄道が走っている。これが面白いと聞いていたので、さっそく駅に行き乗ってみた。普通の人々の日常が満載で、本当にエキサイティングだった。
何も読めない。
時刻表を読むにも数字の形を調べなければならなかった。
これにまた乗り込む。
ドアは開きっぱなし。
ごみごみして混雑した車内は庶民博覧会といった趣。
ヤンゴン駅に到着。
以下、ダウンタウンを歩く。
巨大なダウンタウン。
東西に長く延びる大通りが数本。そこに南北の街路が無数に連なる。
年季が入ってしかもけっこう背の高いビルばかりが並んでいる。
新興都市の賑わいではない。意外。
地元の人たちがくつろぐような茶店へ。
パゴダが見えるからヤンゴン。
たとえばこの世にタイがあるように、この世にはミャンマーがある。何にも知らず普段は思いもしないが、何千万の人口と王国としての千年以上の歴史をもつ民族や国土が存在してきたのだ。当たり前だが、それはすごいことで、それを知らずに私が生きていることが、またすごいことだ。
フェリーで対岸に渡れる。
なおこのフェリー、外国人でも日本人だけは無料。日本が支援したからだとのこと。
フェリーを降りたところは、人でごった返していた。
執拗な客引きも今回初めて体験。
ただ、この青年が作るお焼きを食べてみたら非常にうまくて感動した。
奥のほうで家族が粉をこねているようだ。
右のほうにいる力車の青年K。
明るくしつこく「観光しろ観光しろ」と離れていかないので、根負けしてつきあうことにした。
最初はローカルな寺院に連れて行ってくれた。
下はヤンゴン郊外にある有名な石を模したもの。
市街地とはがらりと変わり、ひなびた集落が続いている。
素朴な寺院があって祭礼が行われていた。ヒンズーっぽい。たぶん地元の青年男女が集まっている。
Kは人々とすぐ和む。
日も暮れてきた。
この一角は、身寄りのない子どもが集団で生活している場所だと言う。
住居が並んでいるところをさっと案内してもらった。
そのあと、なぜか近くにある米穀店に立ち寄った。
Kがいきなり言う。「先ほど見てきた子どもたちのために、ぜひここで米を買い、プレゼントしてほしい」
「えっ どういうこと?」と「はー、そういうことか」の気持ちが半ばしつつも、十分考える間もなく、アジアの先進国の沽券、および優しい日本人の習性からして断れるはずもなく……
私から贈られるとされる米袋。日付と「JAPANESE」と私の名前をマジックで書く。
帰路。もう完全に暗くなった。
ローカルな露天のマーケットを見学。
キンマ(ビンロウ)の店。ミャンマーではいたるところにある。
Kも一服。タバコより安いようだ。
こうして対岸ミステリーツアーは終了。
事件はここで起こった。
蛇口から思いがけず熱湯が勢いよく飛び出し、あわてて止めようとして、スリップ、転倒。頭をバスタブの角にしたたか打ち付けてしまった!
これはまずい。しかも異郷に一人。耳の上から血も流れ出した。ただただ動転。しかしここは落ち着くしかない。
幸い、体も意識も確かだ。しかし頭の打撲なので何があるかわからない。不安なままでは旅行もおぼつかない。とにかくちゃんとした病院で診てもらおう。
そう決めて日本の保険会社に緊急電話をかけて相談した。ヤンゴン市内にMRI検査が可能でしかもキャッシュレス診療OKの病院が1つだけあるとわかり、そこに向かうことにした。ホテルのフロントの人たちやタクシーを運転する人たちが本当に親身になってくれて、とてもありがたかった。
到着した大きな病院内に、外国人などを24時間診療するブースがあった。
MRI検査をしたあと、ここで処置を受けた。
数針も縫った。麻酔をしたが声を出すほど痛かった。
MRI検査は「異常なし」。ほっとした。
ただ、このあと2回通院し抜糸もしなければならない。旅程に影響が出る。…まあそれは仕方ない。予定どおり行かないのが仕事だし旅行だ。持ち上がったタスクはこなすしかない。
記念撮影に応じてくれたスタッフ。左が医師。にこやかに「大丈夫ですよ」(それにしても縫うときは痛かったです)
きょうは長かった。というか、きょうはいったい何だったのだろう。ともあれ、生き延びた。
【Take it easy.】